第7章 初太刀・初脇差
歴史修正主義者・短刀は頭を振りながら、体勢を戻す。加州達は腰に差した自身を手にし、警戒した。
「何で…。」
「って言うか、今、飛んで来たよな?コイツ!?」
重傷の秋田藤四郎を背負う薬研藤四郎は一応、抜刀して臨戦状態になった。そんな彼を守ろうと乱と五虎退は前に出て、二振りを庇った。
敵は彼等を認めると、口に短刀を銜えているのにも関わらず、笑っていた。まるで、こんな所で得物を見つけれたと嬉しそうに。
(敵は一体…それより、何で飛んで来たんだよ…!?)
飛ばされて来た方向を見ると、遠目だが何かいるのが加州には見えた。戦ってるのか…?そんな感じに見えた。
「くうッ…。」
対峙している仲間が次々に倒れていく。一体なのに強いのか、まだ錬度が足りないのか、傷がどんどん増えていく。加州も参戦しようとしていたが、敵はそんなことお構いなしに、ある所に狙いを定めていた。
「逃げて!!薬研!あなたじゃ太刀打ちできないし、薬研まで重傷になる!!」
それは、手負いの兄弟を背負った薬研藤四郎にだ。彼自身も中傷位の傷を負っている。今度こそ、敵の攻撃が当たれば、彼も済まなくなるだろう。
(はは、手負いの者からやるってつもり?狡賢い奴だな…!)
薬研藤四郎は逃げず、応戦しようとしてる。敵はお構いなしに刃を光らせ、振り下ろしてくる。
駄目か…薬研藤四郎は目を瞑ったが、痛みがこれ以上に来ない事と、耳に金属がぶつかる音が聞こえ目を開けた。
「別に、敵に向かって行くのは良い事だけど、少しは自分の状況考えようよ。」
赤い目が怒りの表情を見せる。それは薬研藤四郎にか?いや違う。手負いの者達を手に掛けようとしている敵にだ。
受け止めた刃を押し返し、体勢を整える。敵は空中で体勢を正し、加州を窺う。
「卑怯だよね~。お前等が何なのか知んないけど、もし同じ刀であるのなら、武士の刀として風上にも置けれないよね?そんなに相手して欲しいなら、してあげるよ。」
口元に三日月を描き、笑っている表情になる。だが、目は笑ってはいない。寧ろ見開いて、目元には影が落ちている。
殺気が立っているのか、そこに居る全刀がぞくっと身震いした。五虎退は、あまりの怖さに涙目になっていた。
キレている加州と対峙するのは無理だと判断したのか、敵短刀は加州達がいる所から離れていく。
