第2章 加州清光
でっかい目の前の物に呆気にとらわれているウチをよそに、小さい体を器用に使い引き戸を開けるこんのすけ。
「さあ、どうぞ。お入りください。」
先に上がり、ウチが来るのを待つ。口をあんぐり開けながら、それに続いて入る。
玄関から延びる廊下は不気味に思うほど薄暗い。刹那、明かりが点き不気味な暗さはなくなった。
「よ、よかった…。」
怖いのなんて御免だぞ!
廊下を進んで行きながら、一部屋一部屋案内してもらう。
刀を鍛刀する為の”鍛刀部屋”、傷つく刀を手入れする”手入部屋”、刀を飾る刀装を作る”刀装部屋”、仲間になっ刀剣達が使う部屋複数、その他諸々。
部屋の位置をなんとなく覚えていく。最後に案内された部屋は、
「ここが千隼様の部屋です。」
この先お役目から解放されるまで使うウチの部屋だった。
「広っ!」
たった一人が使うには広すぎる部屋に、声が大きくなる。マジでこの部屋ウチだけが使うの!?
見渡しながら、荷物を置いて一番奥まで行く。障子の引き戸を開けると廊下と池付きの手入れが行き届いている庭だった。
廊下が内と外にあるのには驚いた。
「千隼様。」
「はい!」
今まで見た事なんてあんまない和風の部屋に興奮しだしているウチをこんのすけが呼ぶ。
いつの間にか座布団が用意されていて、その向かいにはこんのすけが座布団に座っていた。
「そろそろ始めましょう。」
座布団に座ったと同時に話し始める。
「何を?」
訳が解らず、こんのすけに聞く。こんのすけはそんな疑問に驚いている。なぜ驚く?
「説明なされませんでしたか?本丸に着いた後の事。」
説明って…まさかあの聞き流したあれ!?ヤバい…。
「あ、いや、その説明聞き流していたんで解りません。」
正直に話せば、「左様ですか…。」と答えた。凄く呆れているのが感じられます。ホントすみません…。
「結構そのような方々はいらっしゃるので別に大丈夫です。」
「すみません…。」
「では、私から説明を致します。」
ですが--、続けた言葉を一旦止め、ウチの腰にさしたままの刀を見やる。
加州清光の事腰に差しているのすっかり忘れてた。
「腰に差されたこれから付喪神”刀剣男士”となる刀を、貴女様の前に置いてください。」
今、何て言った…?