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審神者と刀剣と桜

第2章 加州清光


 ”刀剣男士”って。それが、名称なのは解った。でもウチにとって、問題なのはそこじゃなくて、

「男子って…男なんですか!?」

 男なんて無理だ。今までの生活で、まともに家族以外の男子と話したのなんて、中学一年までだぞ!!
 それが、一つ屋根の下!?冗談じゃないよ…!

「はい、そうです。ですが”男子”ではなく、”男士”です。付喪神の性別はどうでもいいので早く、加州清光を置いてください。」
(少なくとも、ウチにとっては何にも良くない!!)

 今にも近所迷惑になるほどの叫びを上げたい衝動を、無理やり押さえつけた。
 腰の加州清光をベルトから抜き、自分の前に置く。ちゃんと忘れていた事についての謝罪付きで。

「では、今から審神者の力を使い、刀に形を与えます。初めてである今回だけ、私も僭越ながら助言させて頂きます。」
「お、お願いします。」

 これから、君を起こします。

★★★

「何か”媒体”となる物はお持ちですか?」
「持って来ました。」

 刀と一緒に置いたショルダーバッグから、扇子を取り出す。鮮やかな、青色のグラデーションが特徴なそれ。
 どうして扇子が必要か、審神者の力に理由がある。
 物の思いを引き出し、付喪神にする。そんな力が小さなモノで済むはずがない。安定して力を使うには、”媒体”が必要になる。
 簡単に言ってしまえば、魔法使いの杖みたいな役割を果たしてくれる。

「その扇子を開き、刀の上にかざしてください。」

 言われた通りに、扇子を開いて刀の上にかざす。

「後は、念じて下さい。」
(念じる!?)

 青いあれみたいに、演唱があるのかと思っていたのに。予想外過ぎて刀に向けていた目をこんのすけに向けてしまった。

「それだけ?」
「それだけです。」

 記憶力が最近ヤバいウチにとっては安堵する事なのに、残念だという気持ちもある。やってみたいな…演唱!

(念じるなんて、何て念じれば…。)

 具体的な例がないまま念じるなんて、結構無謀だ。でも、人ならなんだっていいんだよね。

(ああ、もう、どうにでもなれ!!)

 両目を固く閉じ、適当に想像してみる。
 閉じれば黒しか見えない。ウチの視界は黒一色。なのに、

(何かが…見える…。)

 ぼやけているけど、確かに見える。人型の形。膝を丸めて誰かが、寝ている姿。多分それが、


(君、なんだね…)
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