第7章 初太刀・初脇差
「おお…ウチの学校の制服とは全然違う…。」
全身の映る鏡の前で、スカートの裾を翻しながら、回っていた。安心して下さい、スカートの下にはスパッツを履いてます。
あんましスカートは自分から履く事は無いに等しいんだよね…。
「わあ~可愛いねその服!」
変な所が無いか鏡で見ていたら、桃色の髪にくりくりした大きな目の女の子みたいな容姿の”乱藤四郎”が扉の所に居た。
「あ、乱。おはよ。」
「おはよ!それが一昨日来た制服?」
「そう。」
満面な笑みを向ければ、乱も同じ様に笑う。
一昨日ーー、万事屋に行った日の午後、オカミさんが言っていた通り食料が届いた。段ボールの箱が沢山ある中、それらよりも薄い箱が一緒に届けられていた。
で、その中に黒色のブレザー・灰色と白色のチェック柄のスカート・青色のネクタイ・替えの付いたワイシャツが入っていた。どれもウチのサイズに合った物だった。
「ねえ、ちょっとこっち向いてよ。」
ふっと、何かを思ったのか乱はウチに手招きしながらそう言った。
鏡を見るのを止め、乱の所へ行くと、ネクタイを引っ張られ顔が物凄く近づいた。
「え…乱さん…?」
「じっとしてて。ネクタイ、直してあげるから。」
三cm位しか変わらない身長。(若干、ウチの方が高い。)目の前に取り敢えず女であるウチも、女を辞めたくなる程、美少女の顔がにある。
自然と顔が熱くなるのが分かる。
「ちゃんとしないとね…。一兄に怒られる…。」
「一兄?」
「え、いや、何でも無いよ!っと、はい出来た。」
手慣れた感じで、歪んでいたウチのネクタイを整えていく。しかも話しながらって、高度じゃないですか。その乱の台詞に首を傾げる言葉があった。
一兄…。お兄さんって事かな?粟田口には兄弟が沢山いるって前田君が言っていたし。
「じゃあ、ボクは先に行くね。ああ、それと、加州が朝ご飯出来たって。」
後でね~。手を振りながら、乱は先に居間へ行ってしまう。朝食出来てたんだ。
学校は今日からで初日であるので、午前中だ。それに必要な物をリュックに入れて、ウチも居間へ向かった。
それでも、ネクタイの時の乱の顔が忘れられない。悲しいのか何なのか分からない表情をしていた。
ウチにとってその”一兄”とやらがどんな刀で刃物なのか分からないから、そっと心の中に仕舞っておく事にした。
