第7章 初太刀・初脇差
リュックを背負って、玄関でヒールがあるローファーを履く。
「良いの?誰か連れてかなくって。」
玄関口で振り向いて、声の主を見る。いつもの戦闘用の明治の洋服みたいなデザインの服でない、黒い袴に赤い着物を着ていた。
「同行しても良いし、しなくても良いって資料に書かれてたし。え、加州来たいの?しょうがないな~。」
「ふざけんな!」
にっこりと笑顔を浮かべて言えば、向こうも笑顔でまた、アイアンロックをかましてくる。痛い、痛いです!加州さん!!
「たくっ…アンタがそう言うなら、帰って来るまで留守番しておくよ。出陣は午後?」
「うん、ウチが帰って来たら。」
スマホを取り出して、時間を確認する。げっ…早めに着くようにって思っていたのに、これじゃあギリギリだ…。
「ヤベ…行ってきます!」
慌てて玄関から出て行くと、後ろから「いってらっしゃい!」っと言ってくれる声が聞こえる。言われるのはやっぱり嬉しい、一人じゃないって実感する。
「って、おい小夜!?」
急いでいるのに愛染の声に気をとられ、足を止めた。
振り向いてみれば、腰に短刀を差し、戦闘服である小坊主の格好に青色の袈裟を着て、背中と同じ位の笠を身に着けた”小夜左文字”がいた。
「あなたに付いて行っても良い?」
身長差ゆえに見上げる形で小夜はウチを見る。何で来たのか、疑問に思うが特に追及するような事じゃないから、頷いて同行に同意した。
★★★
一昨日来た町を通って行く。今日は九時に学校が始まる為、少しは迷っても余裕はあるだろう。
スマホでまた時間を確認しながら、小夜と二人で進んで行く。ただ互いに一言も喋んなくて、複雑な空気を漂わせていた。
「小夜君、時間があるし何処か寄って、お菓子でも買わない?」
「あなたがそうしたいなら。」
足を止めて、笑顔を向けて小夜に言えば、足を止めてそう言う。小夜自身に聞いたのに…。
大体、小夜がウチに来た時からこんな感じだ。万事屋の時だってあんな事言ってて一瞬、焦ったし吃驚した。それにーー、
「ねえ、まだあなたから答えを聞いて無い。」
初対面で酷い事を言ったウチが言うのもあれだけど、初めて会った時、小夜からとんでもない事を聞かれた。
『僕は小夜左文字。あなたは……誰かに復讐を望むのか……?』