第2章 加州清光
さっきから持っていた刀を持ち直し、刀選びをした部屋から退室する。待合室でウチの大きな荷物を見ている二人組の所に行く。
刀選びには、あの二人は同行できないとの事で、待合室で戻って来るのを待っている。
「戻られましたか、岩動様。」
ウチらが見えると、二人は椅子から立ち上がり迎える。片方は自身が身に着けている腕時計を見ていた。
「それでは、行きましょう。丁度時間です。」
異空間へ行く時間みたいなのがあったらしい。三人の大人の後を追い、異空間の扉がある部屋まで行く。
しっかりと必要な大きな荷物を返してもらい、それを押して歩く。
「ここです。」
障子が付いた扉の前に立つ。前の部屋と同じタイプの扉。
和服のおっさんが扉を開ける。中を見れば、どこでもドアみたいな扉があった。扉だけ。
(何この部屋。変!)
可笑しくって部屋を凝視する。扉の色は流石にピンクじゃなくて、白色。他の色なんてない、純白そのもの。
「この扉の先に、審神者様達がいます。そして貴方様も通って頂き、使いの者と合流して頂きます。」
そう言った政府の人達は、障子の扉の前にいてこの部屋にいるのは実質、ウチだけだった。
「扉を開けて頂ければ、自ずとたどり着けます。」
要するに、とっとと行けよと言いたいんですね。そーですか!
誰にも気づかれないように溜息を吐き出す。
「あぁもう嫌だ…。」
選んだ時、おっさんから刀入れと刀を差すベルトを貰った。今、貰ったベルトに加州清光を差している。
差した刀を見てまた溜息が出てくる。
(まあ、なんとかなるよね。)
諦めて、純白の扉のドアノブに手を掛ける。
回して開けてみれば、その先は--
「何これ…!!」
木々が生い茂った自然豊かな場所が目の前に広がっていた。この扉モノホンのどこでもドアだよ!?
誰かに思いっ切り背中を押された。それに扉が閉まる音が遠のきながら聞こえる。
「うわっと…。」
どうにか持ちこたえて、扉がある後ろを見た。そこには扉なんてなくって、あるのは見渡す限りの生い茂った木々ばかり。
「ここ、何処だよ。」
答えてくれる人なんていないのに疑問を口にする。そんなのもほんの一瞬で、
「岩動千隼様ですか?」
声がした足元を見れば、仮面を付けた黄色の狐がいた。