第1章 刀選び
かの有名な坂本龍馬の刀だった”陸奥守吉行”、山姥を切ったとされている”山姥切”を模して造られた”山姥切国広”、歌から付けられた”歌仙兼定”、沢山の贋作が存在する”蜂須賀虎徹”、手に持った"加州清光"の五振り。
「この五振りから選んでください。」
(何このポ〇〇ンみたいなノリ…。)
どうにもゲームをやっている感覚に覚えてくる。そんな簡単に渡せる品物なの?こういうのは…。
どうにもそれがウチの感に触る。だって、これが人間の姿に成るんでしょ?それじゃあ、人身売買みたいな…。
「決めましたか?」
何も言わずに、刀を見つめるウチにおっさんが話しかける。「決めましたか?」じゃないよ!決めにくいよ!実に!!
正直、山姥切国広と手の加州清光で悩んでいた。他の刀も良いと思うけど、この二振りがウチの中で、何かを引っ掻けて来るから。
でも、加州清光を見ていると、何故か胸が痛い。物理的に掴まれているんじゃないかって位、痛い。これは同じ引っ掛かる山姥切国広には無い。
それにねーー
(君と…どっかで会った事ある?)
何でだろう…そう思えるし、会った事がある気がする。初対面って気がしないんだ。
「岩動さん?」
「この刀ーー、”加州清光”にします!」
手に持つそれをギュッと握りしめ、隣にいるおっさんの目を見て言った。
迷っていたけど、この刀にするって決めたとたん、ウチの中ですんなり決まっていた。…分からないけど。
「分かりました。”加州清光”を貴方の”初期刀”にします。登録して来ますので、少々お待ち下さい。」
一礼して、おっさんはどっかに行った。ウチは何もする事が無くなったから、壁に寄りかかって座った。
「これから、宜しくね。加州清光。」
加州清光を優しく撫でる。
今思うと、ここにも何回も来た事がある気がする。…確かに昨日来たばっかりだからそう思うだけかもしんないけど…。
昨日でも何となくそう感じた。でも、気付かないフリしていたのかもしれない。
「岩動さん、登録を完了させたので戻りましょう。」
数分待てば、戻って来たおっさん。おっさんに促されながら、政府から派遣された二人の許に戻る事にした。