第1章 刀選び
翌日になり、車が来る約束の時間になった。
「千隼。気を付けてね。」
「うん。」
心配させまいと笑顔で頷けば、お母さんはウチを抱きしめる。下手をすれば、それもこれが最後になる。
昨日と同じ二人組の後に続いて、ベンツに乗り込む。
「では、行きます。」
若い男はそう言って、車を走らせる。ウチは車の窓から流れる景色をただ黙って見ているだけだった。
★★★
説明をする為に来た建物に今日も来た。というよりも、この場所が過去にも繋がる異空間がある場所でもある。
審神者を過去改変(以下略)を鎮圧するまでその空間に閉じ込める。でも、電子機械類は使える。狙いがイマイチ解らない。
「こんにちは。」
昨日と同じ和服のおっさんが出迎える。会釈付きでこちらも挨拶する。
「昨日話した通り、五振りの刀剣から一振り選んで頂きます。」
(話した!?)
話なんて聞き流していたから初耳だ。しかも”刀剣”って…。
そういえば、過去は銃火器を主に使ってた時ではなくて、まだ刀剣が主流の時だ。
社会科目で習った知識を引っ張り出して、勝手に自己解決していた。
「では、案内します。」
置かれているらしい部屋まで案内してくれるらしいおっさんの後に付いて行く。
(どんな刀でもいいよ…。でも、)
半ば投げやりにまた、なり始めていた。そんな中でもし手に出来るなら、"あの人"の刀だったらと考えていた。
長い廊下を進めば、一枚の障子の扉の前についた。
「ではどうぞ。」
扉が開き中に通される。通った先には飾られた刀が五振りあった。どれもこれも引き込まれそうなほど、綺麗なものだ。
「赤い…。」
その中でも一番ウチの目を引いたのは赤い鞘が特徴の刀。深い艶やかな赤色。黒色も凄く映えている。
「これですか?」
その赤い刀を手にし、こちらに渡して来る。
手にすれば、ずっしりと重い。その重さがここに存在していると主張する。
「これは、”加州清光”。打刀の一つです。」
「”加州清光”…。」
教えてくれた手の中の刀の名前を呟く。ただ何となく。
「で、この刀が--」
”加州清光”を持ちながら一振り一振りずつ名前を聞いていく。
その中には、誰もが知っている偉人の名前が挙げられていた。