第4章 初鍛刀
こんのすけに名を呼ばれ、視線を黄色に向ける。
「今日も政府から、届いております。」
一瞬、何がと思ったが、直ぐに出陣の事だと理解した。
ウチの前に二つの大きな茶封筒と、何かが入っている白い袋が出された。
多分茶封筒は戦についてだと思う。でも、袋は?
それらを手に持ち、中身を確認する。案の定、茶封筒は戦についてだ。だが、袋の方は--、
「インカム…?」
一つ中の物を取り出してみる。それは実際にもよく目にする物だった。
色は黒で、何でこんなのが必要か分からなかった。
「刀剣男士が時間を遡った時、本丸もしくは離れた場所で指揮を執る際に使用される通信機です。」
呟きが聞こえたのか、こんのすけは用途について説明してくれた。
「昨日は突然とはいえ、通信手段が無いのも敗北の原因の一つだったのでしょう。」
嫌に冷たく聞こえる。他人事のような言い方…。実際他人ではあるけど、ウチの使い魔的な存在なのに…?
あまりにも、無関心過ぎるんじゃない?ウチが言うのはあれだけど。
「ねえ、一つ言っても良い?」
さっきまで二つしか無かった声にもう一つ増える。
マニキュアとの格闘は終わったらしい、加州が話に参加してきた。
「何か御座いますか?」
「こんのすけだっけ?他に敗北した原因理解してる?」
塗りたての爪を乾かす為か、誰にも教わって無いのに両手首をブラブラさせ、乾かしている。
そんな動作をしている加州の目は鋭いものになっていた。
「人員でしょうか…。」
「そう、人手。」
即効性のマニキュアなのか直ぐに乾いたらしく、ブラブラさせるのを止め、自身の本体を肩に立て掛ける。
「アンタも見たでしょ、敵の数。単に俺がまだこの体に慣れていないのも原因だけど、明らかに可笑しいでしょ?大勢対単騎って。」
ウチに目配せしながら、話始める。
確かに昨日のは、可笑しかった。敵が多いのに単騎って、しかも普通は体が馴染むまでは出陣させない方が良いに決まってる。
「体を得たばかりっていうのはこの際置いとくけど、如何なのこんのすけ。幾ら刀が、”殺す”事の技術に長けていても、数の多さには敵わない時だってある。」
そこの所はどうするつもり?と言って、こんのすけを見る加州。その眼は睨んでいるように思える。
要するに、仲間はいるのか、彼はそう言いたいのだろう。