第3章 初日終了
数分が経って、片づけが終わった。髪を整えてもらう為に切っていた場所には、塵一つ無い、綺麗な所になった。
「終わった~!」
「やっとね。」
時間かかり過ぎ。隣から痛い所を的確についた言葉が贈られた。ゆっくり片づけていたのは分かっていたから、何も言えない。
「この屋敷の部屋って幾つあるの?」
「沢山。」
「具体的な数字を言ってよ。」
具体的って言われてもさ…沢山あって、数えきれなかっし。それに、一部屋の大きさが尋常じゃない位に大きいし。
「まあ、いいや。…アンタの部屋の隣って空いてたっけ?」
「ここに居るのウチ等だけだし、誰も使ってないよ。」
それよか、ここに来たの今日が初めてですよ。箪笥の中にお布団ってあるかな…?
それぞれ部屋に向かった。ウチの部屋の壁から、隣が動いている音が聞こえる。
取り敢えずはお布団の確認をする為に、箪笥の扉を開ける。中にはしっかりと布団が畳まれて、一式がそこにあった。見た目からにして、新品でフカフカしてそうな物だった。
「布団、敷いちゃうか。」
箪笥から布団一式を取り出す。大きい為、完璧にウチの視界は見えなくなる。意外と大きいな…大きいにこした事は無いけど。
且つ、意外と重いそれを下ろす。丁度、机がある場所の傍に置いて、畳まれたままの布団にダイブする。
視界に今まで入らなかった机が目に入る。机の上にはウチが昼間使っていた扇子が置かれていた。それに、見慣れない物も置かれていた。
「何コレ。」
扇子の傍にあったそれを手に取れば、深い艶やかな赤色のマニキュアだった。まるで、加州の爪の色みたいな。マニキュアと一緒に一枚の紙も置かれていた。
マニキュアを持っていない手で紙を持ち、読んでみる。差出人?はこんのすけだった。
「『これを加州清光に。』って、加州宛なのに、何でウチに。」
いや、それが一番確かに本刀に渡るからなんだろう。取り敢えず、コレを加州に渡しますか。
手の中の赤い小さなボトルを転がしながら、隣に突撃訪問する。
「加州にお届け物です。」
「はあ?」
開けた扉から見せた加州の顔は、眉間に皺を寄せて不愉快そうなものだった。
「コレ。」
こんのすけからのプレゼントを渡して、隣へ自分の部屋へ戻った。
「はあ?」
加州の小さな疑問符が聞こえる。
そんなこんなで、夜は更けていく。