第3章 初日終了
少し考える素振りを見せてから、ウチでも聞こえる位の声でこう言った。
「アンタに仕えるのも悪くないかも…。」
「え、え、え!?」
訳分かんなくて、困惑するしかないウチに追い打ちをかけるかのように、加州清光は言った。
「あー。川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね。」
突然に始める自己紹介(二回目)。どういう事ですか?
「ねえ、反応、何か返してよ。何?俺を使えないとか言わないよね?」
大事にするって言った癖して。正直に言いますと…無理でしょ!?大事にするけど、するけどさ!
「別に、アンタが実際に振り回せって言ってる訳じゃないし。振り回すのは俺達だから。…しっかりと戦場で指揮を執る事、これから増えていく仲間を折らない様に。」
その目は優しいモノで、包み込んでくれる程温かい。呼吸をするのを忘れてしまいそうだ…。
「チビだし、沸点が低いし、何も知識が無い。他にも色々言いたい事があるけど、アンタが主になるのは…悪くはないかも。」
それから、ウチの目から視線を外して顔を背けた。その行動が、照れている様な感じがした。本当はどうだか知らないけど。
「主じゃ無いよ。」
「え…。」
「主じゃなくて、”仲間”。出来る限りは、対等でいたいし、ウチは只の所有者だし。」
ね。今度はウチが笑顔を見せる番だった。多分、許してくれたのだろう。本心は分からない。
★★★
今、大人しく髪を切ってもらってる所です。
刀にましては、神様に髪を切ってもらうなんて絶対ない体験だ。
無造作に包丁で切ったウチの髪が可笑しいから、揃えたいと言う事だった。
別に…美容院見つけて切りに行くのに…。用意してから切ってもらっている。鋏や下に敷く新聞紙とか。(何処にあったの新聞紙。)
「そのままの髪型で外に行くの、恥ずかしいと思わないの?」
「思いますよ…。だから、明日切りに行こうかと…。」
「町とかどんなものなのか分からないのに?」
と言われて、何も言えなかった。というよりーー、
「何で町があるって…。」
顔を彼に向けようとすれば、動くなというように、顔を両手で挟まれ前を向かれる。
「始めの場所で、嫌でも聞くから。」
髪を切りながら、器用に答えてくれる。
始めの場所は、五振りの刀が置かれていた部屋の事だろう。色々と聞こえているんだ。