第3章 初日終了
何、言い始めてるんだコイツ。正直な所、そうしか思えなかった。
「刃こぼれが多数。しかも、帽子まで折れて使い物にならなくなって、最後はポイっだった。」
多分、彼が今日まで辿った刃生の話だろう。黙って、話を聞く。静かにしていれば、話は続く。
「…折れなかったら、まだ”あの人”が使ってくれてたのかもしんない。”あの人”の最後までいられたのかもしれない。…自分の弱さを思い知ったし、可愛がられてなかったんだって分かった。」
洗い終わった食器を立て掛けて、流されぱなっしの水を止める。それから、体を加州清光の方へ向ける。
彼は自分を蔑むかのように笑っていた。
「そりゃ、そうだよな!俺は扱いづらいもん。使える人だって、ほんの一握り。そんな面倒くさい刀(俺)を使うなんて物好きだよ。」
何処か、本心では無さそうだ。彼も皮肉を言いながら、笑っているのか、泣いているのか分からない声だった。
「…貴方の主は誰なのか知らないし、刀なんて興味が無かった。興味があったのは歴史の偉人だから。でも、これだけは分かる。君は主さんが好きだったんでしょ?だってーー、」
ーー泣いてる。
彼の赤い目から透明な液体が零れていた。そう、涙。彼の目から涙が流れていた。
「それに、君の主さんも君を好きだったと思う。だって、刃こぼれって言うのになって傷ついても、直しに出してたんでしょ?時代がどうなのか分からないけど…。直してくれるって事は、大事にしててくれたって事だから。」
君は愛されてた。いや、違う。愛されてるんだ、今も。
「俺は…。」
「今日初めて会った奴に言われてもね~。…しかも、酷い事言ってたし。嫌でしょ?信じれないし。済みませんでした。生意気な事言って。」
ウチも自虐した笑いを口にして、頭を下げる。もう、駄目な悪い事を自分で言うから、さらに心を抉ってるんでしょ?…ドМか!?ウチは、ドМか!
「…何で、こんな事アンタに話したんだろ……。」
今度の笑いはどんな感情を込めて笑ってるんだろう。正解が分からない笑い声が彼の口から出てくる。
表情はさっきまでの真顔じゃない、何処か愉快そうな顔だった。
「大事にされてた、か…。ねえ、アンタも俺を大事にしてくれる?」
「え、え!?」
「いいから、早く答えて。」
「だ、大事にします…。」
「そう。」