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審神者と刀剣と桜

第3章 初日終了


 さっきまで半目でウチを見上げていた癖して、バツが悪そうに顔をそっぽに向ける。

「別に、信じなくていいですよ。幾ら言ってても、相手がどう受け止めるかだから無駄ですし。それに、こんな礼儀知らずが”捨てない”って言っても、信憑性なんて無いですし。」

 自分で無造作に切った髪を少し取り、指先で弄る。髪の長さがやっぱり、バラバラだ。明日、切ってこないと。

「人間は、」

 今思えば、皮肉を込めて言ってたぽい。加州清光はずっと下を向いたまま、何も言ってこない。このまま黙っているのかななんて見ていたら、遂に口を開いた。

「人間は、使い物にならなくなったら捨てる。まだ、使えるのに、性能が良い奴が来たら直ぐに捨てる。それに、直してくれればまた、使えるのに直してくれない、使ってくれない。…それをさ、如何信じればいいの?アンタは分かるの?」

 なんとなく、思い当たる伏はある。一番初めに出てきたのは、ゲームだった。確かに、強い奴が仲間になったら、使うけどーー、

「人間ならそんな人達は多いよ。私ーーウチもそうだし。でもさ、そんな人間の中にも少数では好きな物を何年も何十年も使っている人だっている。使えなくなっても、傍に置いておく人がいる。」

 ウチの父さんがそういう人だ。高校生の時から使っている筆箱やシャーペンを今でも使っている。母さんも、物を長く使う人だ。そんな人が自分の親だから、

「…使い方は荒いし、長持ちしなさそうなのかもしれないけど、ウチだって気に入った物は長く使いたいし、愛着を持ったら傍に置いておきたい。これでも結構、物を長く使いたい派なんだ。」

 ボロボロになっちゃえなんて口にしたけどね。
 信じるなんて簡単な事じゃない。信じない方が楽だし、傷つかないで済むし、変な気を使わないで済む。でもーー、

「物の気持ちなんて分からない。でも、そう言うって事は、人間を信じたいんでしょ?…信じ切れないのなら、見定めればいい。一緒に居て、信頼できるなら信じる。事も無げに言ったけど、簡単じゃないけど。…もし無理なら、離れてくれてかまわない。」

 ウチになんてそんな権利はない。ましてや、主だなんて思ってもいないし。唯の所有者なだけだし。
 何時までも立っているのは如何かと思うので、また、胡坐を掻いて座る。
 加州清光はあれからまた一言も喋らなくなった。顔を伏せたまま。
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