第2章 加州清光
この言葉を言った後、すぐに頭が冷えた。幾ら、頭に血が上って、冷静さがなかったにしても、言って良い事と悪い事がある。
本当はこんな事を言いたかったんじゃない!ちゃんと大切にしようと思ってたのに…。
言われた相手は、その台詞に目を見開いて、それから悲しそうな怒りがこもった表情を見せた。
「ああ、分かったよ。主がそう望んでるなら、壊れてきてやるよ!!」
今までの怠そうな口調が荒々しいそれに変わる。それだけ怒らせてしまっているという事だ。
死ね。それと同じ意味を持った言葉を言った。こんなに怒るのは当たり前だ。ウチが言われた言葉なんて可愛いもんだ。
謝ろうとして口を開いても、声が出ない。意気地なしだ。いつもこんな事になれば謝る事さえ出来ない。
「今、”歴史修正主義者”が戊辰戦争の最後の戦場、函館を襲撃しているようです。至急行かないと--。」
こんなにギスギスした空気で、状況なのに気にした素振りを見せずに、こんのすけは淡々と告げる。
それに、「分かった。」と彼は言った。部屋を出て行くこんのすけの後を追うかのように、部屋を出て行く。
去り際に、
「…愛してくれるんじゃないかって、思った俺が馬鹿だった。」
と、言い残した。
違う!!あんな事を言うつもりじゃなかった。そんな事を思ったって、ただの言い訳だ。言った事は、もう変えられない事実なんだから…。
★★★
「千隼様。」
部屋の隅で丸くなり、自己嫌悪に陥っていた。そこにこんのすけが近づいて来た。
(初対面の相手に言うなんて、本当に最低な人間だ。ウチは…。)
「落ち込んでだって、貴女が悪いんです。それよりも、出陣した彼の状況を見ないといけませんよ。」
膝を抱えた間に入れていた顔を上げ、黄色に目を向ける。ウチの視界は歪んで、揺れていた。液体から向うの景色を見ているみたいに。
こんのすけは慣れた手つきで、何かを起動させる。薄い画面が宙に浮く。とてつもなく未来的なそれに、一瞬止まる。
「ここから、出陣させた部隊を見る事が出来ます。当然指示も出せます。」
映っている景色は、あちらこちらに炎が映し出されていた。今まで見た事が無い景色。
ウチがいた時代よりも生い茂っている木々が、そこには刀が刺さっているのもある。
「ッ…。」
次に映し出されたのは、彼が戦っている所だった。