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審神者と刀剣と桜

第2章 加州清光


 背を向けて座り、何かをし始める加州清光に言い放った。ウチの言葉に、髪が揺れながら、思いっ切り振り向かれる。

「その言葉、もう一回お返しするよ。だって、いきなり怒るなんて可笑しいじゃん。何?俺、主に対して逆鱗に触れること言ったの?」

 見えた顔にはまさにキレています、というような表情があった。赤い猫目が冷たい刃みたいになっていて痛い。

「そうだね。言ったよ!見事に逆鱗にね、チビって言葉で。自分だって嫌な事言われたら嫌だって思わないの?」

 鋭く突き刺さる視線に負けまいと睨み返す。

「だって、そんなの解んないじゃん。初対面なのに。どうやって、分かれって言うの?」

 正論だ。初対面なのに解るはずがない。だから、予想して言わないようにする。本人はあの時、呟いてるから聞こえないと思っていたのかもしんない。
 でも、聞こえた。聞こえたからキレてんだ。何も言わないでいれば、相手が爪を弄りながら続ける。

「ほら、言い返せない。」
「普通は、予想してそういう事を言わないようにするでしょ?」
「俺は、ただ注意しただけだよ。これ以上可愛くしたのに、汚されたら愛されないじゃん。」

 確かに、彼の言葉は注意だった。何も言い返せない。言い返せる要素なんてない。

「ほら、言い返せない。」

 勝ち誇った表情を見せる。それが今のウチにとって、怒りを増幅させる薬にしかならなかった。
 相手は、「あ、爪が剥がれてる…。」って、自分の爪を気にしてる。…何だよコイツ!本当にーー、
 今思えば、ウチが言った言葉はウチが言われた言葉よりも酷い事だった。言ったのを後悔して、反省しないといけないほど。そして、この先ずーっと忘れる事なんてないだろう。

「女々しい奴だな…!ボロボロになちゃえばいいんだ。アンタなんて。」

 一気に不機嫌になったウチの口から出る言葉は、自分でも冷たく突き刺さるもんだと思える声音であった。
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