第9章 沖田総司の愛刀
これ以上は互いに話す事を止めた。和泉守と堀川は口煩く言わなくても、加州は頭がきれる刀だというのを理解していた。
だから、この話は言うのを止めた。
千隼の部屋を加州を残して二振りは出る。
「兼さんーー、大人になったね。」
「お前…そう思ってたのかよ!国広…。」
意外そうな顔を見せ、身長差のある和泉守を見上げる堀川。それに心外だと表情に出して見返す。
「僕さ、少し不思議に思う事があるんだ。」
「何だよ。」
「ほら、演練後の医務室で清光に話を聞いたじゃん。『相手の清光と何話してたの?』って。」
「ああ、何か話してたな演練中。」
廊下を歩きながら居間へと向かう。
「確か…清光と主殿のくだらない言い争いについて、色々言われたみたいな感じだったな。」
「それもそうだけど、その後、『あの子を殺す気かって。』言われたって言っていたじゃない?」
「ああ…言ってたな。」
突然、堀川は歩くのを止め、足を止める。横目で見ていた和泉守も釣られて足を止めた。
「”あの子”って誰の事かな…。それに、そのくだらない言い争いの事、何で知ってるのかな。」
「そりゃ…あれだろう。結構大声だったから、聞こえてたんだろ。他所の本丸の奴等が醜いって思う位だったって事じゃねーの?」
「…清光は本当に沖田君に似てるよ。近藤さんに対しての沖田さんの態度みたいで。」
★★★
足に冷たい水の感触がする。それは足首まで浸からせている。
始めて、ウチは周りを見渡した。
「空の中にいるみたいだ…。」
青空が水面に反射して映し出されて、まるで空の中に立っている様だ…。
「確か、ウユニ塩湖だっけ?東○喰○のオープニングにもこんな光景、あったな~。」
綺麗だなと思う位で、特に感じる事はなかった。何でこんな所にいるのかは置いといて、歩いてみる事にした。
足は素足。靴も靴下も履いてない。服は何故かいつも着ているようなラフな物じゃなくて、水干風ーー現代チックのデザインの白拍子風の着物を着ていた。
「あれ?いつの間にオカミさんから貰った服、着てるんだろう。」
一旦、歩くのを止めて腕を揚げてみたり、背中を見たり、自分の今の格好について、見て回ってみた。
七五三みたいだね、コレ。服に着られてるってこういう事なんだろう。そんなウチの頭上から、低い、男性の声が聞こえた。