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審神者と刀剣と桜

第9章 沖田総司の愛刀


 玄関の扉は開いていて、星が瞬く黒い空が見える。そんな中で、外の外套のおかげで玄関前は明るかった。

「兼定…。」
「おい!どうしたんだよ!?」

 彼が目的にしていた加州と千隼はそこにいたが、様子が可笑しかった。
 千隼が加州の腕の中でぐったりとしていた。まるで、和泉守が初めて主になる彼女と会った時の様な感じだった。
 ただ、その時と決定的に違うのは、千隼の頭から赤い液体が流れていた。明かりに照らされて見える地面には、ポツポツと赤いものが零れていた。
 加州は情けない顔で和泉守に助けを求める。いつもの加州なら冷静に対処出来る事だったが、和泉守が来る前の事によって、そんな余裕は無くなっていた。

(清光が幾ら気に入らないって言ってても、主を傷つけれる程のたまじゃねーし…。それにアイツの服、汚れてねーか?)
「国広!!」

 腕の中にいる千隼を揺らさぬ様に、加州から彼女を受け取り、自身の助手と評する堀川を大声で呼んだ。

★★★

 明かりが点いている千隼の部屋には、頭に包帯を巻いた布団に寝ている彼女の傍に、和泉守・堀川・薬研がいた。
 扉から他の刀達が心配そうに顔を覗かしていた。

「清光、入って来なよ!薬研君が手当てしてくれたから、主さんは大丈夫だから。」
「…いい。」
「あああああ!めんどくせー奴だな!!」

 無理やりにでも部屋に入れようと、短刀達の反対側にいる加州の腕を引っ張った。
 一回、拒否をするが、観念して渋々といった感じで部屋へ入った。

「ねえ、清光。何があったの?何で主さん、頭から血を流してたの?」

 堀川は詳細が知りたかった。同じ様に和泉守も。本丸内にある救急箱の中身で出来る程度の手当てしか出来ていなかった。それでも何とか安定はしてくれているらしい。

「…いつの間にか倒れてたんだよ…。」

 こうなる前に起こったーー千隼が加州に話しかけてから彼女が血を流して倒れえるまでの話をした。

「ーー『黙れよ。』って言われた瞬間、体を押さえつけられた様に重くなったんだ。四つん這いな格好で治まるのを待ってたんだ。」
「だからお前の服は汚れてたんだな。」
「うん。…急に押さえつけられる重さが無くなったなと思ったら、アイツが頭を思いっきり打ちつけて、倒れてたんだ。」
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