第9章 沖田総司の愛刀
簡潔に沖田総司について、ウチが知っている事を真顔で口にした。名前さえ分かれば、幾らでも知っている事は出てくる。
加州は唖然とウチを見てくる。
「よくよく思い返せば、君って小さい子とか好きでしょ?沖田さんも小さい子が好きで、よく遊んでいたらしいね。…でもさ、それだけで分かる訳ないじゃん。ごめんね、気付いてあげれなくて。」
彼の横を通り過ぎながら、思いっきり睨んだ。声は自然と冷たいものになる。
いつかの時は声を荒げてキレていたけど、今回のは小夜の時のに近かった。
「君が沖田さんの刀という事を知らない事が気に入らないって逆ギレする前に、名前を出せや。言わなきゃ分かる訳ないじゃん。で、主である沖田さんの名前を口にしてない癖に、知らなかったらキレる。意味分かんな。」
取り合えず、アンタには謝んないから。だって、ウチは悪い事してないと思うけど?
それを言い残して、本丸に上がった。
ミーハーだとは思うよ、本当に好きなら所持していた刀についても知っているんだから。…ウチも謝んないといけないけど、あんな態度されたら謝るどころか、向こうが謝れって思うもん。
こう見えてもウチは父親に似て頑固だから、謝って来るまで無視し続けてやる。
「…あの黒い狐のお面を被ってる向こうの俺に、言われたから言ってるの?男が苦手で嫌いだって言ってる癖して、尻軽だな。」
イライラしすぎて、頭が痛い。背を向けたウチに対してそんな事を言ってきた。言った内容が、漫画とかにあるくだらない、糞男みたいな台詞だ。
お前は何なんだ!?ウチの何なんだ。
「黙れよ。」
意識せずに出てきた言葉。これでもかという位に睨みながら言う。目尻が痛い。だけど、その目を見開く事になる。
「えっ…。」
さっきまで普通に立っていた加州が、四つん這いの格好で何かに耐えていた。完全に加州に体を向け、目を向けた。
まるで上から重力を掛けられているようだ。ウチにはそれは感じない。でも、頭が痛い。
イラつきが最高潮に達しているからなのか、何なのか、分からない。それから、体が怠いと思い始めた。
…何が起こってるの?
糸が切れたみたいで、ウチは玄関口で倒れた。
★★★
千隼と加州が帰ってくる気配が無い。不思議に思った和泉守は玄関へ行く。
「なっ…!?」