第9章 沖田総司の愛刀
和泉守さん曰く、新選組となってからは、ヒトの人数が多くなった分無法地帯化が進んでいた。【新選組】という組織を守る為に、局中法度を作った。
その頃からか、今まで一緒に手合わせしていた土方さんは隊員達がしっかりと手合わせしているか、見張る事が多くなったそうだ。
「あの時の雪辱を果たす為に、強くならにゃ~いけないけど、こうやって仲間と一緒に手合わせするのも良い事だな。」
はにかむ様な形で和泉守さんは笑う。
皆、あの演練の時から己を高める為に、積極的に手合わせや出陣する事が多くなった。そのやる気は、今も健在。
でも、私のそのやる気は演練後の翌日には喪失していた。強くならなくてはとその場で思っていたのに、時間が経つとそのやる気は始めから無かったかの様になっていた。
「そういや、清光の前の主は知ってるか?」
さっきまでの話の内容と180度変わった話を、投げられた。
「アイツが、『アイツは知らないんじゃないの?』って言いてたからな。気になっちまった。」
加州の主……。
「沖田、総司……さんですよね。新選組一番組組長で、天才剣士の。」
「知ってんのかよ!?……アイツ、知らねーって言っていた癖に……。」
確かに、知らなかった。でも、加州が気になったから調べた。だから、知っている。
そのニュアンスを含めた言葉で、和泉守さんに知っている理由を話した。
「沖田さんの愛刀だと言われていた刀剣で知っていたのは、【菊一文字】だけでした。」
「ああ……、あれはーー、」
「当時の庶民でも沖田さんの給料でも持つ事が出来ない程、高価な刀であったと現代(今)で解明されていて、それに彼等を題材にした小説の創作ではないかって言われているので、信じてません。」
そこは、知ってるんだ。そんな小さな呟きが聞こえた。
そんな事を何処で知って、覚えたのか、忘れちゃったけど、それだけは確かだと自信がある。
「まあ、沖田の愛刀に菊の模様が装飾されているのが居たから、そう勘違いを起こす奴はいたからな。」
「大和守安定は友人から教えて貰って、加州はさっき言ったように調べるまでは誰が主だったのか、知らなかったので。」
苦笑い気味に笑うと、和泉守さんは溜息を一つ吐いた。
「安定は、沖田に心酔していたから凄く分かりやすいしな。って、言っても同じ位に清光もーー、」
