第9章 沖田総司の愛刀
今、ウチの刀剣を手入れしてくれているお姉さんも、もしかしたらあの五振りから刀剣を選んで、ウチと同じ様に未来と正しい過去を守る為に、動いていたんだろう。
そう考えると、あるかもしれない”縁”で繋がるはずだった刀剣男士達にとっては気分が良いモノではないだろうな。
「まあ、刀剣達を持てませんって事は承諾して、ここにいるんだから彼女や彼等の意志だけどね。」
手の指を組み、腕を上に伸ばして背中を伸ばす大和守安定。それからウチに顔を向け、にっこりと笑う。
「僕達はこれで行こうと思うよ。清光がこっちに戻って来たって事は僕も行かないといけないしね。」
「有難うございます!色々と。」
「目が凄く腫れてるから帰ったら、しっかりと冷やすんだよ?向こうの俺も君も、彼等も今日の演練で何か掴んでくれたら良いけど……。」
「いえ、自分の甘さ加減に気付きました。」
そっか。少し嬉しそうな声でお面を付けた顔を見せる。
「それなら良いんだ。それと、俺達の主から伝言!この件はこっちでどうしてこうなったのか、詳しく調べるみたいだよ。次、何時会えるか分からないけど調べた結果を話せたらいいな。」
その言葉を最後として、手入れ部屋を沖田総司の愛刀達は後にした。
ウチはその背中を見送った後、まだ、終わっていない刀剣の手入れを待つ事にした。
★★★
あの出来事から、加州達の”日課”にあるモノが一つ増えた。
「おっしゃあ!まだまだ!!」
「踏み込みが、甘いと思うよ。」
「は、はい!」
本丸の敷地内の、本殿から離れた場所にある道場。二日目位の時に加州が今ちゃんを連れて、手合わせをした所。
木と木が激しくぶつかりあう音が、道場に広がる。本体と同じ位の木刀を全員、手にしている。
「……昔を思い出すな。」
「昔……ですか?」
おお。タオルを首にかけて、そのタオルで滴り落ちてくる汗を拭う和泉守さんが、ウチの隣に腰を下ろす。
手にしていた木刀を隣に置く。
「新選組になる前の、壬生浪士時代の事だけどな。」
「壬生浪士。」
「あの時は、歳さんも一緒に手合わせしていたんだよな~って、懐かしくなった。あの時の俺や国広、清光なんかは、歳さんや沖田達には見えなかったし、まあ、こっちから触る事とかできたけどな。」
何処か遠くを見る様に、懐かしいと顔に出しながらも他の皆の手合わせを見ている。
