第8章 演練
「さっきのぶつかって来た審神者さんだよね?」
少し距離があったものを詰めて、目の前に来た。その腕にはぶつかった際に見えたウチのと色が似たブレスレットが見えた。
「さっきはすみませんでした……。」
「良いんだって。という事は、主が言っていた変更されたお相手というのが、彼女等という訳?」
「うん、そうだね。」
大和守安定は、ここにいるだけでも多くの彼がいる。でも、声や言葉が”さっき会った”というニュアンスだから、なんとなくわかった。
そしてーー、
「あの、審神者さんは…?」
あの時、目が合ったあの青年の姿がここにはなかった。考えられる事としては、何処かへ行ったのではないか。
「ああ、主は別の部隊の演練に同行してるよ。あっちの方が相手の癖が強いからね。特に審神者が。」
お面の加州は呆れた様に言って、ウチの肩から手を放した。その口ぶりから何度も会った事があると予想が出来た。
「まあ、主の事は良いとして、こっちはこっちで早く始めようか。だってーー、」
野次馬が集まって来た。さっきまでの明るく、楽しそうな声音が一気に冷えた。本当に冷えた。冷えたって表現が一番合っている気がした。
急に、それよりもウチがここに来てからか、上の方で人の話し声が聞こえていた。上との距離は結構あるから、どんな会話がされているのかなんて、ウチには分からない。
「主君。始めるのでしたら、僕達は上の方へ行ってきます。」
今回、演練に出ない子達がウチの元に来て、話しかけてきた。
でも、それを止めたのは相手である政府直属の本丸の刀剣だった。
「上に行くのは、止めといた方が良いぜ。主の傍にいてやりな。」
全身、頭のてっぺんから足先まで、真っ白な儚い見た目の青年が前田君に話しかけた。しっかりと相手の目線に合わせるかの様に、しゃがんで。
「そうだね。鶴さんの言う通りだよ。座る場所は、結構広いし。」
白い青年の後に続く様に、片目に眼帯を付けたホストの様な顔立ちと雰囲気の青年。物凄く、背が高い。
見上げる様に相手を見ると、目が合った。相手も分かったのか、にっこりと微笑んできた。予想外の事で、顔が熱を持つ。
イケメンに、微笑みかけられたら誰でもそんな反応する!!
「じゃあ、とっとと始めて、とっとと終わりましょうか。」