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審神者と刀剣と桜

第8章 演練


 加州と大和守安定を見ていた彼の目がウチに向く。それから後ろを向き、彼の刀剣達の元へ行ってしまった。

「ねえ、君。」

 大和守安定が声をかけてきたので、彼を見上げる。

「周りをしっかりと見て。また、僕にぶつかった様な事が起きないとは限らないし、相手が温和な人とも限らないから。」

 笑顔を浮かべてウチに注意を促す。

「それと、演練、頑張ってね。初めてでしょ。」

 それだけを言って、黒髪の青年の後に続いてこの場を後にした。あれ?何で、初めてだって知ってるの!?
 ウチは黙って彼等の後姿を見ていた。

「安定……。」

 加州も同様に彼等の後姿を見ていた。何かを言っているのが聞こえて、彼の横顔を見上げる。

「彼はーー彼等は、政府直属の!?」

 いつの間にウチの足元にいたのか、こんのすけが開いているか分からない口から驚きの言葉を出した。

「岩動様、あれが先程お話しさせて頂いた、政府直属の審神者様でございます。やはり、纏う空気というものが違いますね。」
「彼等が……。」

 確かに、何処か周りにいる他の審神者さん達とは何かが違う様に思えた。凛としているというのかな。

「ねえ、こんのすけ。」
「はい。何でしょう。」
「その直属の人、もしくはその人に仕える刀剣は他の本丸について把握している部分があるの?」

 さっきの大和守安定の発言が疑問で、こんのすけに聞いてみた。

「先程、岩動様にお相手の簡易的な資料をお渡ししました。人によっては今までのお相手の資料を持っておられる審神者様もおられます。直属となると、毎日の様に相手をなさるので顔を覚えてしまう事も、本丸の事を知ってしまう事も不思議ではありません。」
「という事は、成ったばかりの審神者の事も知ってるって事か……。」

 有り得ない話じゃないよね。こんのすけの答えに納得して、時間が気になってスマホを見る。
 げっ!?時間がーー、

「後、三分じゃん!?」

 ウチの演練開始まで、残り三分となっていた。あの時、周りを見ないでぶつかった自分を殴りたい!

「急ぎましょう。」

 こんのすけのその言葉で、駆け足でウチ等に分け充てられたブロックへと急いだ。
 只、この時のウチ等は思ってもいなかったんだ。

ーー予想外の出来事に遭遇してしまうなんて。
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