第8章 演練
下のフィールドに行く為に階段を下りる。ついでに鞄からこんのすけから貰った相手の情報を見る。
「備前国の審神者さん。隊長が”歌仙兼定”と以下五名が相手らしいよ。」
特に相手の審神者さんの名前なんて気にしていないから、そこは素通りして、その人がしている編成を今日のメンバーに順々に見せていく。
最後に左隣にいる加州に資料が渡る。
「お前と同じ位の時期に審神者になった奴らしいね。」
「うん。そうらしい。」
一通り目を通したのか、直ぐにウチに資料が戻って来た。
「演練は基本的に、審神者様のレベルが同等の方と行います。」
「基本的にって事は例外があるんだな。」
こんのすけが説明をしていると、薬研が疑問に思った事を口にした。基本的にって事はそうだね、例外があるって事だ。
「ええ。例外はあります。審神者様のレベルが政府が定めた数値である99ーー所謂”カンスト”となった場合、その方が属している国の政府直属の審神者様と演練を行ってもらいます。その方に勝つ事が出来れば、新たに上限が解放され、政府から優遇されます。」
「要するに、その人と手合わせする事は昇格試験みたいなもの?でいいの?」
こんのすけに聞くと、「ええ。その認識で構いません。」と返って来た。
政府は審神者や刀剣男士達にゲームでもよくある”レベル”を付けた。ゲームではそのキャラの数値が分かるからレベルも解るけど、実際の人間にやっても数値なんて見えないから分からない。
そこで政府は独自にレベルを付けて、その人や刀剣がどんだけ強いのか表示した。その技術は、ウチがいた2015年じゃない、2205年の技術からだと思う。
「でも、お前の練度じゃ無理だね。」
「ウチだけじゃなくて、お前もだろ!?」
お世辞にも強いとは言えないレベル。その直属の人と手合わせするのは、凄く先の話になりそうだ。
一度、資料に目を向けてから、周りに目を向ける。通っている廊下には複数の刀剣男士と審神者らしき人がいる。
ウチと同じ様に洋服の人もいれば、結構高そうな着物を着ている人、巫女の様な着物の人、人ではない人以外の動物とか……。個性豊かだな。
「ちょ、千隼!!」
周りに気を取られていたのか、頭に何かが当たった感触がした。当たったというか、自分からぶつかったというか……。