第8章 演練
「でも、騒がないならこのままでも良いと思うよ。それよりも、主さん。」
「はい?」
和泉守さんと小声(自分の中では)で話すと、彼の隣に座っている堀川君も話に入ったのち、ウチを呼ぶ。堀川君に目を向けると真剣な面持ちで口を開いた。
「”演練”、行くんですか?オカミさんから聞いたんだけど、主さんと同じ位に来た審神者さんの殆どは、演練に参加しているって。僕達は参加しないの?」
昼に天音と話していた演練の話が、ここでも出てくる。色々あり過ぎてすっかり頭から離れていた。
「演練って、他の本丸のボク達ないし他の刀剣と手合わせするんだよね。」
「うん。そういうのだってこんのすけから話は聞いたよ。」
乱は万屋に初めて行った時に買ってあげた、ピンク色のモフモフしたクッションを抱きながら、話に入って来た。
彼と一緒にいた短刀達も、話をしているウチと新選組刀に顔を向けてくる。
「べつのほんまるにいる、ぼくたちですか!」
「行ってみたいです!」
無邪気な短刀達は、他の本丸の自分に会えるかもしれないとテンションが上がってる。まだ、審神者は参加するとは言ってないんだけどな。
薬研は騒ぎ始める短刀達の中で、落ち着いた面持ちでいた。
「薬研は嬉しいとか楽しみとかないの?」
その姿を見てか、乱が薬研に声をかける。
「あるっちゃあるが……大将は”参加する”とは言ってないだろ?」
「あ、」
些細な会話でその事に気付いてくれた薬研は、それを乱達に言うと気付いたのかテンションが下がっていった。
「さんか、しないんですか?あるじさま。」
今ちゃんがウチに子犬の様な目で、参加する事を促してくる。
まさか……参加する事に賛成するなんて思ってもみなかった。加州はどうだか知らないけど、あやつ以外は賛成の意志を示してる。
どうしようか、また悩み始めていたら、今まで黙っていた加州が口を開いた。
「良いんじゃない?参加しても。お遊びじゃないけど、自分達がどの位の強さで、俺達よりも先の時代を対処している本丸の俺達がどんな強さなのか、知る事も出来るし。」
意外と前向きに考えていたらしい。それがウチにとって後押しになった。
「参加……してみようか。明日なんて急だから、明後日。明後日の演練から参加し始めよう。」
ウチがそういうと、嬉しそうな反応を見せる。急に決めた事だけどね。
