第8章 演練
依然と固まったままのウチはどうしよと考えまくっていて、頭が真っ白になっていた。
「ねえ、付けるなら早くしろよ。じゃないと、付けないよ。」
そんなウチの目の前に、掌を天井に向けた状態の手首が差し出された。微かに見える爪が赤い。
いつの間にかウチの近くに腰を下ろしていた加州が、ブレスレットを付けるように促してきた。
余りにも予想と真逆の事に彼の顔を凝視した。
「早く!」
「うえ、あ、うん。」
とっとと終わらせたいのか赤い目を睨ませながら、早くしろと促してくる。正直に言って、怖いです加州さん。
オカミさんがウチに付けてくれた様に、ウチも加州の手首に付ける。付け終ると、一応、終わったと声をかけた。
「これって、取り外しできるの?」
加州は留め具を弄りながら、疑問を口にする。留め具がある以上、自分で付け外し出来るよね、普通。
ウチも留め具をもう一度弄っていると、外れた。でも、加州は同じ様にしているのに外れない。
「言うの忘れていたわ。審神者はブレスレットの取り外しは出来るけど、刀剣男士の皆は審神者が皆のそれを外してあげない限り、外れないし、その本丸の刀剣男士である事になるのよ。」
ごめんなさい。てへぺろと言いながら、下を出しそうな感じのオカミさんの言葉に、ウチと加州は唖然とした。
「え、それってーー、」
「要するに、本丸の審神者に認められた刀剣男士っていう証って事?コレ。」
加州の手では外れない手首にあるブレスレットを、オカミさんの前で掲げる加州。オカミさんは肯定するかの様に頷いた。
「初めに万屋に来てくれた事があったじゃない?その時に渡す予定だったのに、すっかり頭から抜けててね。今になってしまったの。」
その後、ウチと加州は唖然というか、何というか、混乱したままオカミさんが本丸を出ていくのを見送った。
「何か……爆弾を落とされた気がする。」
「……。」
オカミさんのとの話を加州以外の皆に話すと、皆、付けるという返事をくれ、それぞれの片方の手首にはお揃いのブレスレットを身に着ける事になった。
「もし、嫌になったら言ってくれれば良いよ。外すから。」
「俺達は、早々そんな事はねーけど……。」
「ああ、うん。何となく言いたい事は分かってる。」
和泉守さんは横目でウチの隣にいる加州を見ている。皆まで言わなくても察してる。
