第8章 演練
箱をオカミさんが開ける。
中身は青色の輪っかが大量に入っていた。一つ手に持っても良さそうだったから、持ってみてよく見ると、模様が編み込まれたミサンガみたいなブレスレットだった。
「ミサンガ……?ブレスレット?」
「ブレスレットで良いかしら。私もよくは分からないのだけれど。」
分からないんかい!?思わず心の中で突っ込んでしまった。手に持つ輪っかが何物なのかなんて気にしている素振りはオカミさんにはなかった。
よくそのブレスレットなるものを見ると、青の他に紫だったり紺というか黒というかーー青系統の色で編み込まれていた。
「綺麗ですね。」
禍々しい感じではなくて、光に照らされて光る色の様に綺麗な色だったから、口から呟きが漏れた。
「でしょ?よかった~。千隼ちゃんが気に入ってくれて。」
「へ?」
ウチにとって意味不明な言葉がオカミさんの口から出てきて、間抜けな声が出た。
「このブレスレットは、本丸に来た刀剣男士をロックしておく物なの。」
「ロックしておくってーー、」
首輪みたいな。口に出す前に、オカミさんから否定の言葉が挟まれる。
「首輪ではないの。それは、他の本丸の刀剣男士と見分けを付ける為に審神者が本丸に来た刀剣男士に付けるの。当然、付けるのには相手の合意が必要だし、審神者も付ける。」
貸してみて。言われたとおりに手に持ったそれをオカミさんに渡すと、オカミさんはウチの手首にそれを付けた。
ウチの手首には髪ゴムとか付けているけど、輪っかの大きさが、それと丁度同じ位で苦しくなかった。
「審神者が付けるのは、これと同じ物を付けた自分が彼等の主だというのを示す為。一個、取り出して加州清光に付けてみたら?」
え、思わぬ提案にブレスレットを弄っていた手を止めた。アイツにウチが付けるの?無理、絶対無理!
アイツは「嫌だ。」って即答するだろうし。無理。
オカミさんに軽く首を左右に振って、無理だと意思表示をしてみる。でも、オカミさんは至って笑顔を浮かべたままだ。
どうすんの、やんなきゃいけないの?え、えええええ……。
一個手に新たに持ったまま、加州を横目で見た。アイツは何を思っているのか分からない表情で何処か見ていた。
まだ、まだ短刀ちゃん達とかなら出来るのに、堀川君とか和泉守さんとか。加州は理由が言えない程、無理。