第8章 演練
和泉守さんが草履でも履いていたのかな?その位の大きさはあるよ。
自分に割り当てられた本丸なのは分かっているけど、謎の草履で戸惑いが生まれた。
ずっと玄関にいても後ろの誰かさんに、後頭部を殴られる。早く中に入れって。
「誰か、来てるのかな……。」
ボソッと呟いたのと同時位に、秋田君と愛染が姿を現した。
「おかえりなさい!主君!!加州さん!!」
「主さん、お客さんが来てるぜ。」
「お客さん?」
急かす様に秋田君は靴を脱いだばっかのウチの腕を引っ張って、本丸に上がらせた。そして、愛染はウチの背中を思いっきり押してきて、転びそうになった。
お客さんとは誰の事なのか?多分、玄関にある小夜以外の草履の持ち主だって事だよね。
「主君が戻って参りました!」
腕を引っ張るのが止んだと思ったら、ウチにと割り振られた部屋の隣の客間の障子の扉の前にいた。
扉の外である廊下から、中に人がいるのだろうその人に秋田君は話し掛けた。
「主君、中の方に和泉守さんと堀川さんがお相手しているんですがーー、」
「お客さんって誰?」
「オカミさんです。」
ウチの事を待っている人とは誰なのか、聞きながら扉を開けるとそこには湯呑を手に持ち、お茶であろうそれに口を付けているオカミさんがいた。
★★★
「勝手に上がってしまって、ごめんなさいね。この時間なら、貴方は帰って来ているとばかりに思っていたから。」
「あ、いえ……。今日は偶々、色々あって遅くなってしまっただけなんです。お待たせしてしまって、申し訳ないです。」
オカミさんの相手をしていた和泉守さんと堀川君と交代して、彼等が座っていた所に腰を下ろす。
堀川君はウチと扉の方に寄りかかって座っている加州に、お茶を出してくれた。
「うんん。勝手に来てしまったこっちが悪いから、謝らないで。」
にっこりと見惚れてしまう程の笑顔を見せた。その様子からは全然、気にしてない事が分かったから、良かった……。
連絡とか一切、無かったからまさか来客があったとは思わなかった。ちゃんと、インカムとか連絡手段を持って行こう、そうしよう。
「今日はね、貴方に渡す物があって来たんだけどーー、」
と、言いながらオカミさんの傍らに置かれた風呂敷の包みを机の上に置く。それから包みを解くと、木箱の様な取り敢えず、箱が姿を現した。