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審神者と刀剣と桜

第8章 演練


 当たり障り無い会話をすると、小声で天音が話しかけてきた。

「ちはやん。この人誰?」
「えっと…この人は…。」

 橘高さんに向けていた顔を天音に向けてから戻す。どう説明すればいいの?
 ウチ等の会話が聞こえたのか、橘高さんは学校初日に見せた柔和な笑顔をまた見せて、天音に自己紹介をした。

「橘高康晴って言います。千隼ちゃんとは初日に知り合った、彼女の友人です。」
「あ、そうなんですか…。あたしは高塚天音と言います。宜しく。」

 天音は橘高さんに対して軽く一礼をする。彼女の隣にいる陸奥守さんも橘高さんを凝視していた。
 次に橘高さんが目を向けたのは、ウチの右隣に居る刀だった。
 隣に目を向ければ、加州は赤い、釣り目をこれでもかと開いて、橘高さんを見ていた。何?どうしたの!?

「あれ?小夜君じゃないね。」
「あ、えっと…。」
「ごめん、俺、厠に行ってくる。」

 加州のトイレに行く発言が、ウチが発しようとした言葉に被さる。さっきまで短い言葉しか口にしてなかったのに、急にどうした!?
 人が多くいる食堂に微かに響く様に、椅子を引く音を立てながら、食堂から出て行ってしまった。
 本当に、今日はどうした?いつものアイツじゃないよ?
 加州の心情なんてこの時のウチは知らなかった。
★★★

 アイツの所に誰かが来た。声からして男。別に、誰が誰と交流を持とうが関係ないから見もしていなかった。
 二、三個、見知らぬ誰かとアイツは言葉を交わしているらしい。
 それよりも、さっきまで見ていた”あれ”が気になってしょうがない。…まあ、本当じゃなかったのが救いだったけど。
 見知らぬ栗色の髪の男に触られた感触が残っているし、アイツを触った時の血の感触も体が覚えてる。
 胸糞悪いよ…。しかも、お昼時。肘をついてその掌に顎を乗せる。
 それとさっきから思っていたけど、アイツの知り合いである男の声が何処かで聞いた事があるって感じなんだけど…。
 さっきから視線を感じていたから、横目で怠そうに男を見やれば、そいつはーー

「ッ……。」

 ついさっき見ていた悪夢に出て、意味不明な事を言っていた男と瓜二つな顔をしていた。思わず目が見開いてしまう。
 拍動が凄まじく速くなっているし、手が何故か震える。一見、無害そうに思えるのに、何かがコイツはヤバいって告げている気がする。
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