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審神者と刀剣と桜

第8章 演練


★★★

「ちはやん!こっち!!」

 食堂に到着すると、出入り口は人で溢れ返っていた。扉の近くにある券売機には、長蛇の列。
 一度で良いから、食堂のご飯を食べてみたいんだよね。学校のだから値段が財布に優しいし。美味しいって噂だし。

「ごめん。お待たせしやした。」

 人混みの中でも分かるようにか、これでもかという位大きく手を振っている天音の姿を発見し、人混みを掻き分けて辿り着く。
 その際にチラッと後ろを振り向くと、しっかりと加州も付いて来てた。

「大丈夫だよ。あ、先に頂いてます!」
「じゃあ、ウチも食べよう。」

 自分用のお弁当箱を取り出して、机に置く。隣の席に着いた加州にも持っていた加州のお弁当を渡す。
 加州は寝起き感がまだ治まらないのか、目の焦点が未だに合っていないようにな気がした。

「加州、お弁当。堀川君特製の。」
「ああ…有難う。」

 本当に、寝起き感満載なんですけど!?何?ウチの頭突きの所為もあるのかな…?……いや、それはないな。昔、鬼婆なんて呼ばれてた事もあったけど、それだけでコイツが参るような奴じゃないし…。

「ちはやんのお弁当、いつも美味しそうだよね。」
「そういう天音のお弁当も、いつも美味しそうじゃん。今日は半分位になっているからどんなのが入っていたのか知らないけど。」

 本当にいつも美味しそうなおかずが入っている、天音のお弁当。ウチのもここ最近は、堀川君が体に慣れる為にお弁当を作ってくれている。
 兼定さんも作る事があるけど、まだ、慣れていないのか失敗する事がしばしば。
 手を合わせて、「いただきます。」と言ってから綺麗に盛られているお弁当に手をつける。

「おまんも早よ食べんと、時間になるき。」
「……。」

 まだまだ上の空な加州を心配してか、天音の本丸の陸奥守さんが声をかける。取り敢えずは聞こえてたらしくて、特に何か言う事無くお弁当を開いて、食べ始めた。

「ねえ、いつもなら何かしら返事してくれるのに、どうしたの?ちはやんの加州。」
「分かんない。さっき、寝てたじゃん?起きてからずっとこんな感じ。」

 いつもと違う加州に違和感を感じたのか、天音も思わず聞いてくる。ウチだって、心当たりなんてない。
 …何か、悪夢でも見てた?でないと冷や汗を出す程、なんて普通はないと思うけど。
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