第8章 演練
『…折れなかったら、まだ”あの人”が使ってくれてたのかもしんない。”あの人”の最後までいられたのかもしれない。…自分の弱さを思い知ったし、可愛がられてなかったんだって分かった。』
ブラウザを閉じながら、ふっと、忘れかけていたけど、加州の吐き捨てる様な言い方をした言葉を思い出した。
極端に捨てられる事に対して恐怖があるような、そんな感じだった。
沖田さんが主なら、何で加州は捨てられる恐怖を感じるんだろう。…彼に捨てられたから。もっともだろうね、寧ろ正解。凄く主の事好きそうだったし。
主が分かれば、自然と何時代にいたのか自ずとわかる。
「加州の、刃生は本刀の口から話してもらわないとね…。」
もっと深くまで調べてしまえば、簡単に分かる事だよ。でも、そういうのは、プライバシー云々があるし。何より、本刀の口からウチは聞きたい。
話してくれた時は、ウチの話でもしようか。凄く嫌な顔されると思うけど。
いい加減、全然起きないから、起こそうと彼の方に手を伸ばした。でないと、時間が無くなってお昼抜きになる。それは辛いんですけど。
「かーー…」
「加州。」と呼ぼうとしたが、その声が口の中で消える。凄く苦しそうな顔をして魘されている加州の姿があった。
一体、どんな夢を見ているんだ。甚だ凄く疑問だけど、彼の見えるおでこには玉の様な汗が大量に見える。
これ以上は、加州が危ないのではと思えて、少し力を込めて肩を揺すりながら、彼の名前を呼んだ。
「加州!!」
肩を揺らしていた手を掴まれた。それは爪が赤く染められた手。加州の手だ。
急に、遠慮なしに掴まれた為、肩を飛び上がらせながら驚く。そして、色気も糞もねえ声を上げた。
掴まれるまでは別に、どうでもよかった。だが、次の行為にはその端正な顔をぶん殴りたくなった。
「ちょっ!寝ぼけてんの!?加州!!」
そのまま引き寄せられて、加州にガッチリホールドされた。無意識なのかいつもは手加減をしてくれている力が、若干強かった。
腕の中にいるウチはなんとかそこから脱出しようと、身じろいだり、胸を押してみたりするが、無理!力強すぎだ。
確かに、ウチの本丸内で一番強いのは間違いなく、加州だ。でも、ここまでビクともしない程、強いの!?
出れない恐怖とここが教室内で人がいるという羞恥に、頭がパニックを起こし始めていた。
