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体力の代わりに

第5章 三対三


月島side

烏野高校の校舎前、長く続く坂道を上っていたとき、

月(あ、昨日と同じ車)

昨日月原さんと別れた後に
いかにも高そうな黒塗りの車が、
坂ノ下商店の前に停まっていた。

それと同じ車だった。


いつもと同じようにヘッドホンで曲を聴きながら
坂を上り続ける。

月(あ・・・)

ようやく学校に入ると、少し先に
白い車イスが見えた。

長い背もたれのせいで頭は半分ほどしか見えない。

月(ちょっといじめてやろ)

その姿は何故か僕をそんな気にさせた。

『わわっ!』

後ろから不意打ちを掛け、引っ張る。

勝手に左手が動いて、月原さんの左手をはがす。

月(何でこんなことを・・・)

『ビックリするじゃん。やめてよ、
 月島くん』

月(バレてたか)

後ろを振り向かずに僕の名前を言った月原さんは
後ろから引っ張った時点で気付いていたようだ。

月「何か一人でいるのが
  可哀想に見えたー。ごめんねー(棒読み)」

口をついて出た言葉は、
嘘か、本当か。

『ヤダ』

月「本性出てるよ」

『もういいの。別に本性じゃないし』

だったら何なんだよ。

月「そう・・・。
  で、その髪、どうしたの?」

近づいてから気になっていたことを問う。

いつもは髪を下ろしている月原さんが、
今日は髪を二つに結んでいる。

『髪?ああ、時間あったし、
 私も気合いを入れようかと思って縛ってきた』

変な奴。でも、

月「まあ、悪くないんじゃない///」

いつもは見えないうなじが見えて、
ほんの少しドキリとした。

月「でも、二つに結んでると、
  子供っぽく見えるね」

だからといって褒めてばかりじゃ面白くない。

『なっ!失礼な!』

ずっと前を見ていた月原さんが
むすっとした顔で僕を見てきて、
僕はポーカーフェイスを保つのに必死だった。
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