第4章 その娘、武人にて迷宮に挑む
「ちょっと休みませんか?一度作戦を立て直した方が良いと思うんですが。」
「そうだな。少し休もう。」
紅炎はそう言うと皆に休憩を伝えた。
莉蘭は近くの壁に凭れて腰を下ろすと、持参していた水筒を取り出す。
水を飲もうと水筒を傾けた筈なのに、肝心の渇きが満たされる前に底を尽きてしまった。
辺りに水源らしきものは無く、如何したものかとただ空になった水筒を見つめていると、視界の横から別の水筒が出くる。
その手を辿って視線を上げれば、水筒の持ち主は紅炎だった。
「紅炎様?」
莉蘭が不思議に思って首を傾げると、紅炎は一言「飲んでおけ」と言って水筒を手渡す。
有難く受け取ると水はまだ半分以上入っていた。
蓋を外して二口分だけ飲むと、水筒を紅炎に返す。
受け取った紅炎も一口だけ口にすると水筒を仕舞った。
体格や体力の問題もあるのだろうが、疲れが見える自分と違って紅炎は至って普段通りだ。
この人は疲れていないのだろうか。
そう思いながら見つめていると、それに気づいた紅炎と目が合ってしまった。
驚いた莉蘭は思わず目を逸らす。
心臓の脈打つ音が何時もより少しだけ早く感じた。
あまり感じの良い反応ではないが、紅炎は大して気にしてはいない様で何も言ってこない。
これからの段取りを紅炎と紅明が相談している中、莉蘭は一人座ってぼーっとしていた。
すると突然視界が何かに覆われ暗転する。
一瞬の浮遊感が体を襲い、気がつくと目の前には大きな扉があった。
先程のものより二周りは大きく、装飾も豪華になっている。
鍵穴は無いようだが、一人では到底開けられない代物だった。
辺りを見回しても扉はこの一つだけ。
百人は余裕で収まりそうな石造りの部屋には自分一人。
如何やって来たのかも分からず、莉蘭は首を傾げた。
「此処、何処?」
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その頃、残された者達は一瞬の出来事に呆然としていた。
莉蘭が、床から生えてきた食人植物に攫われたのである。
「今、食べられてませんでした?」
「食われたな。あの食人植物に。」
「どっか行っちゃったね。」
その後緊急会議が行われたのであった。