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マギ 〜その娘皇子の妃にて〜

第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す


これを機に話せないかと考えていた莉蘭は少し嬉しかった。

例えこんな形になったとしても。

「良いも何も、この結婚は避けられないものです。この国の為なら私は喜んで嫁ぎますよ。」

莉蘭はそう言って精一杯笑って見せた。

然し、莉駿はそれを見て表情を更に曇らせる。
その表情からして、今回の件に納得していないのは明らかだった。

「然しそれでは!…それでは、お前が幸せになれないだろう。…お前が、お前だけが犠牲になるなんて…」

そう言った莉駿の顔は苦悩に歪んでいた。

彼もきっと分かっているのだ。
この結婚は政略結婚で、戦争を避ける為にも断ることは許されないのだと。

それでも折り合いを付けられない感情が有るから、今此処に居る。

莉蘭は真っ直ぐに莉駿の目を見つめ側に寄ると、彼の頬を両の手でそっと包み込んだ。

「兄様、莉蘭は何も犠牲になる訳ではありません。これは私が望んだこと。確かに家族や故郷と離れてしまうのは寂しいですが、私は女です。何時かは嫁がねば為らない。それが今になったというだけです。」

莉蘭は言い聞かせる様にしてゆっくりと話した。

莉駿が黙って聞いているのを確認すると、優しくにっこりと微笑む。


______この際だから全て話してしまおうか


「私は、何時でも父様や国の皆に笑っていて欲しい。でも、今までずっと一番に笑って欲しいと思っていたのは、莉駿、貴方です。あの日以来、兄様は私を避けるようになった。私はそれが酷く悲しかった。寂しかった。」

莉蘭がそう言うと、莉駿は気まずそうに視線を逸らし瞳を伏せた。
その姿は少し痛々しく、心が痛む。

然し、莉蘭は言葉を続けた。

「それでも、私を見る度に辛そうに笑う貴方を見るくらいなら、と、側に居るのを止めたんです。私の所為で兄様が辛いなら、今回は私が居なくなる良い機会でしょう?だから、笑って下さい。これは妹からの、莉蘭からの最後の我儘です。」

再び向けられた瞳には困惑の色が見えた。
眉尻は垂れ下がり、如何にも痛みに耐えている顔をしている。

莉蘭が笑いかけると視線は外され、憂いを帯びた瞳は再び伏せられた。
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