第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
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莉蘭、莉駿、莉鎧は現在紅炎と共に昼食中である。
何を思ったのか父が「一緒に」と提案し、紅炎はそれを承諾した。
まあ、一緒に食事するくらい何でも無いのだが、問題は父の紅炎に対する態度である。
自分が呼ばれるまでの間一体何の話をしていたのか。
警戒していた筈の、と言うより、するべき筈の父がやけに友好的に話していて、紅炎も先程とは打って変わって棘の無い話し方になっている。
何の話をしているのかと耳を傾けてみると、どうやら「此処ではない別の世界の話」をしているらしかった。
父は昔からそういった話を時折していて、小さい頃から何回も聞かされた所為もあってか、莉蘭も少し興味があった。
が、今はそんな事関係無い。
敵国の相手とこんなに仲良さげに話す王など、この世界中を探してもそう居ないだろう。
(何やってるんだか、この人は…)
こういった父の性格とは長い付き合いだから慣れている。
この人の平和思考はとことんだ。
時折その考え方に頭を痛める時もある。
然し、そんな父が莉蘭は好きだった。
それに、別に平和惚けしている訳でもない。
やる事は確りやる人だ。
そんな父が相手だからだろうか。
楽しそうに話す紅炎は先程とは最早別人に見えた。
(最初からあんな感じならまだ良かったのに…。)
心の中でそう思いながらも、今日は一日人形に徹することを決めた莉蘭は、兄同様黙々と食事を続けたのだった。