第3章 その娘、王族にて政略結婚を為す
あれから約十年が経ち、莉蘭は無事十六歳となり成人を迎えた。
同じ年に莉駿は二十歳を迎え、立派な次期王位後継者として逞しく育っていた。
其れ等は王であり父である莉鎧にとってこの上なく喜ばしい事だった。
然し、あの日から二人の間には目には見えない大きな溝が確実に出来ていた。
仲の良かった兄が自分の顔を見る度辛さを隠して笑う様になり、それを見るのが辛くて、莉蘭は何時しか自分から兄を避けるようになった。
何時も一緒に居た莉蘭にとってそれは耐え難いものであり、その寂しさを埋めるかの様にして勉強に没頭した。
幸い普段から勉強は好きだった為、苦痛では無かった。
自分の力が安定しないから、周りの人が心配するのだ。
力が安定すれば皆安心してくれる。
また兄が笑ってくれる。
幼いながらにそう思い、莉蘭は必死に勉学に励んだ。
体力をつける為、武術の鍛錬も怠らなかった。
その為、莉蘭は武術も勉学も出来る優秀な人物として有名になっていた。
まあ、本人は知らない事だが。