第1章 緑色のキセキ。
彼女の存在に気付いたのは
中学1年の夏前だった。
雨が降り続く不快でじめっとする嫌な時期だった。
俺は一人、用具返却のため雨の降り込む渡り廊下を
大量のストップウォッチの入ったカゴを抱え
女子バスケ部の活動する体育館へと向かっていた。
「…なんで俺がこんなことしなければいけないのだよ…。今日はおは朝占い1位のはずなのに…。」
今日はおは朝占いで蟹座は第1位だった。
おまけにラッキーアイテムの瑠璃色のハンカチも持っている。
にも、関わらず全く良い事がない。
大きく溜息をつきながら、
抱えていた荷物を一度置くと、
勢いよく体育館のドアを開けた。
"ッキュ"
バッシュのスキール音が響き渡る。
まだ練習している奴がいたのか。
もう20時だっていうのに…。
ぎこちない動きでドリブルとシュートの練習を続ける後姿をしばらく眺めた。
黒く長い髪が動くたびに揺れる。