第3章 シンドリア王国
「どうやって侵入した」
え…?侵入…?
なんのことだろ…
私はただ、鳥を追いかけただけで。
『と、鳥を追いかけてたらいつの間にか…』
「その鳥を追いかけ、結界を歪めてここまできた、ということですか」
『?…結界って何のことで…!?』
最後まで言い終わる前に目の前の人が
さっきの凶器を私に当たるスレスレに投げてきた。
その速さに反応出来るはずもなく、
もし当たっていたらという事を考えると
なお、震えが止まらなくなる。
「ふざけるな。このシンドリアには常人では破られない結界が張ってある。その結界に気付かずこの地に入れることはありえない」
よく分からないけど、
更に警戒させてしまった…
どうすれば良いの?
私は本当に何もしてないのに…
真っ白な頭のまま、
何を言えば良いのか考えてる時
再び凶器を構える彼にもうダメだと思い目をつむった。
「…ジャーファル」
静かな空間を裂くようにして聞こえた落ち着いた声。
その声に反応したのは凶器を構えていた彼。
一瞬でピリピリとした空気が薄れ、
彼の殺気が少しなくなったことを悟る。
「……シン」
「ヤムライハの結界を歪めたのは彼女か?」
「えぇ、おそらく」
紫色の髪をした、なんとも言えないオーラと
華美な装飾品に身分が高い人なのだと勘づく。
それにしても紫と白い髪の色って…
ここは日本…だよね?
でも服装、顔立ちからしても
アジア系ではない事は確かだし…。
脳内でごちゃごちゃ考えていると
紫色の髪の人がこちらを向き目が合う。
私はどうなってしまうのだろう…
今や海外はデモやテロが多く、それに日本人が被害になる事も少なくはない。
私もここで殺されてしまうのだろうか…?
親孝行、もっとしておけば良かったな。
私の気持ちとは裏腹に紫の人は
私に向かってにこりと微笑むとこちらに近付き腰を少し曲げて、私の手を優しく取る。
「お嬢さんの名前を聞いてもいいかな?」
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