第2章 遠い日の想い出
少女はあの日、絶望を味わった
彼女の綺麗な青い瞳とは正反対の赤い、赤い炎に囲まれながら
赤い、赤い自らの血液を体にできた斬り口から垂れ流し少女の周りで動かなくなった男女の死体
それらは少女の親と呼ぶべき存在、所謂父と母…両親とも言うものだ
幼い少女の白い服はすすと血で汚れ
顏もすすや血、そして目に留まる事なく流れ落ち続ける雫でぐちゃぐちゃだ
幼い少女の頭には、死の恐怖と煙による息苦しさ。そして初めて立ち会う愛する者の死で占められていた
幼いながらも分かる、生きる術
残酷ながらもまだ生暖かい母親だったモノの赤い液体を頭から被り
涙を拭く暇などなく炎の中に飛び込んだ
炎の海から飛び出ると、親を斬った男と同じ服を着た大人が何人も立っていた
本能的に逃げなきゃ、そう思った少女は大人達が伸ばしてくる手から逃げた
逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて……
「お前の罪は…お前の命そのものだ」
そう一人の男が少女に追いつくと、二つの傷を負わせる
一つはあの炎の中で死ななかった罰として
一つはあの二人から生まれてきてしまった罰として
意識が遠のいたそのとき
少女に希望の光が差す――――