第1章 サプライズデート
二人で歩いてきたのは昼間来たアクセサリーのお店。テツヤ君と一緒に奥のカウンターまでやってきた。
黒子「すみません、もう出来てますか?」
テツヤ君は何か書かれた紙を2枚差し出した。キャストさんはそれを受け取ると、奥の棚から小さな袋を取り出して戻ってきた。
「お待たせしました。ご確認お願いします」
取り出されたのはネックレスが2つ。これ、インフォメーションに載ってたセミオーダーのリングネックレスだ。1つはシルバーチェーンにリングと赤いロンデル。もう1つはピンクゴールドのチェーンにリングとカギのチャーム。
「こちらでお間違いないですか?」
黒子「はい、ありがとうございます。このまま着けていきたいんですがいいですか?」
「もちろんどうぞ。ではこちらをお持ちください」
キャストさんが差し出したのは小さなラッピングバッグ。オーガンジーの小袋の中にバレンタインナイトのロゴの入った小袋が入っている。リボンを引くと巾着になった。かわいいなこの袋。
テツヤ君がおもむろにピンクゴールドのチェーンの方を手に取ると、私にかけてくれた。
黒子「それは穂波さんのです。リングには僕のイニシャルが入ってます。シルバーの方は僕のです。リングに穂波さんのイニシャルが入ってます」
シルバーチェーンの方を私の手に乗せる。
黒子「着けてくれませんか?僕に」
言われるままにネックレスをテツヤ君にかける。なんだか結婚式の指輪の交換みたい。
黒子「今はこのくらいしか用意できませんが、いつか必ず本物を用意します。だからその時までこれ以外のリングは身につけないでください。本物の指輪を交換する時まで、これだけを身につけていてください」
テツヤ君は真剣だった。だったら私も真剣に答えないと。答えは1つに決まっているけど。
穂波「うん、私はずっとこれを身につけているね。いつか本物の指輪を交換する時が来てもずっとね」
確かにこれは取っておきのサプライズだ。本日2度目のプロポーズ。私はやっと応えることができた。嬉しい。ただただ嬉しい。一番大切な人に、こんなにも想われてるなんて。私は本当に幸せ者だ。