第7章 すくいたい
その後も少女は度々やって来ては結晶を作っていた。
何故泣いているのか、何がそんなに辛いのか、何故涙が結晶となるのか、わからないことばかりだがわかったこともある。
少女は涙を結晶に変えるチカラはあるが霊力はないこと、触ろうともすり抜けてしまう躰なのにその結晶だけは触れることができること。
掌の上を転がる結晶を眺めていると思う。
ヒトの一生は短い、けれど言い換えれば瞬きのように一瞬で成長していく。
それはこの目で感じたこと。
あんなに小さかった少女はどんどん大人に近付き女性らしさが出てきていた。
そんな少女が結晶を生み出しながら呟いた言葉。
それは俺が初めて聞いた少女の声でなんと恐ろしい言葉で――――――。
「…………しんで、しまいたい…………」
思わず結晶を落としそうになった。
今少女は、なんと言った…?死を、望むと…そう言ったのか…?
触れられないと知っていても足は勝手に動いていた。
泣くな、と喉を震わせても少女には聞こえない。
肩に触れようと伸ばす手はすり抜ける。
もし、少女に霊力が合ったなら。俺に万物を凌駕する神だからこその力が合ったなら。
君に、そんな言葉を紡がせない。
君に、とびきりの驚きで笑みを贈りたい。
君に、君を、君が、君へ。
やってやりたいことができてしまった。
そう思いながらも溢れ続ける結晶ではなく頬を伝うただの涙を掬いとってあげられたなら。
嗚呼ただのヒトと役に立たぬ神はなんと歯痒いのか。
少女の涙が止まるまで傍にいるしかできなかった。
今までのように去っていく少女の後ろ姿を見送り、独りになった蔵の中で願う。
どうか、あの子に救いを。
強く強く願う。その救いを与えるのが、俺なら、と。
掌に閉じ込めた結晶は気付いたら砕けてしまっていた。