第7章 すくいたい
永い歴史の中でいろいろな目に遭った。
神刀になったり、墓から掘り出されたりと…まあ、いろいろだ。
そんな俺が今どこぞの金持ちの蔵の中にいる。
俺を手に入れるだけ手に入れて蔵に放置とはそれはそれで驚きだがな。
暗い蔵の中で唯唯時間だけが過ぎていくのを感じていると、待ちに待った驚きがやって来た。
それは突然だった。
蔵の戸の隙間から差し込む光と共に入ってきたのは俺を此処に放置した老体とは違う、ずうっと小さい…子供…?
その小さき者は何かから逃げるように急いで開けた戸を閉めそのまま座り込んだ。すると直ぐに肩口で切り揃えられた髪が顔を覆うように落ちて。
泣いて、いる…?
確かめるべく覗きこんだ。
そして続けざまに驚きが俺を待っていた。
大きな瞳からポロポロと溢れる雫は頬を伝い落ちて服に染みを作って……いかなかった。
雫は落ちながら形を変え結晶となり床を転がっていく。
…………こりゃ驚いた………。
涙が結晶になるとはな…。
静かに涙を結晶に変える少女は暫くすると袖で目許を擦って蔵から去っていった。
残された結晶は微かに天から差し込む光で輝いていた。