第2章 夕立
そんな彼と、久しぶりにばったり出くわした。
原因はやはり夕立で、濡れ鼠になりながら、適当なバスの停留所に駆け込んだ。
停留所と言っても、ベンチの三方に申し訳程度の壁を建て、屋根をのっけただけのものだ。
かなり昔のものだとわかる褪せたポスターと、
数時間に一本しか便のない、スカスカの時刻表の貼られたここだけが、
いつからか時間を進めるのを諦めてしまったような空気だった。
そして、停留所のベンチの端に、彼はこぢんまりと座っていた。
「なんだ、お前か」と、私を見るなり呟く。
新しい中学の制服はブレザーなのだろう。
きっちりと着込んだ彼は、だいぶ昔と印象が違って見えた。
ブレザーのポケットに寒そうに手を突っ込んで、背中をじっと丸めている。
こっちの方が寒いっての、と、私は構わずタオルで濡れ髪を拭き始めた。
話を聞くと、彼も雨に降られてここに逃げ込んできたらしい。
「そう言えば、俺も見れるようになった」
何の脈絡もなく、彼はそう続けた。