• テキストサイズ

おにとゆうだち

第2章 夕立


そんな彼と、久しぶりにばったり出くわした。

 原因はやはり夕立で、濡れ鼠になりながら、適当なバスの停留所に駆け込んだ。
 停留所と言っても、ベンチの三方に申し訳程度の壁を建て、屋根をのっけただけのものだ。
 かなり昔のものだとわかる褪せたポスターと、
 数時間に一本しか便のない、スカスカの時刻表の貼られたここだけが、
 いつからか時間を進めるのを諦めてしまったような空気だった。

 そして、停留所のベンチの端に、彼はこぢんまりと座っていた。
「なんだ、お前か」と、私を見るなり呟く。

 新しい中学の制服はブレザーなのだろう。
 きっちりと着込んだ彼は、だいぶ昔と印象が違って見えた。
 ブレザーのポケットに寒そうに手を突っ込んで、背中をじっと丸めている。
 こっちの方が寒いっての、と、私は構わずタオルで濡れ髪を拭き始めた。
 話を聞くと、彼も雨に降られてここに逃げ込んできたらしい。

「そう言えば、俺も見れるようになった」

 何の脈絡もなく、彼はそう続けた。
/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp