第2章 夕立
鬼の行列を遮ると、連れて行かれて鬼になる。
だから、鬼の出るような急な雨に行き会ったら、みんな道の脇に退いて雨宿りをするのさ。
お祖母ちゃんはそう言っていた。
雨に濡れれば体も冷える。体が冷えれば病をもらう。
連れて行かれるという言も、なかなか説得力がある。
だが中学に上がって二年、私が鬼に行き会う回数は減っていた。
夏休み、夕立の降る時間帯には、決まって体育館で部活に励んでいるからだ。
行列は、なかなかきちんと統率されていた。
彼らは道をはみ出して、施設に入ってくることはない。
通学路の長さと宿題が増え、代わりに余裕の減った私の頭から、
鬼のことは失われて久しかった。
転校生だった彼はといえば、鬼の見えないまま、隣町にある、頭のいい中学に歩を進めた。
隣町にも、鬼は出るのだろうか。
卒業式以来、彼からの音沙汰は、ない。