• テキストサイズ

おにとゆうだち

第1章 友達



転校生は、鬼が見えない、らしい。

 その次の年の夏休み、鬼探しに転校生を連れ回してみて、得た結論が、これだった。
 
 鬼とは三度ほど行き会った。
 鼻先を、炎でできた金魚の尾ひれが掠めても、彼は全くの無反応だった。

 その目の前で、篠突く雨の中を、粛々と行列は進んでいく。
 鬼たちは濡れることがない。
 
 前輪のひしゃげた自転車。太鼓腹した猿顔の小人。膝から角を生やした、油っぽい大蛙。
 のんびりした速度の鈴の音。
 髪を梳る女の顔は、腹の起伏についている。
 そうして最後、極彩色の蝶の群れ。

 感嘆の声を上げた私に、彼は胡乱げな目を向けていた。
/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp