第1章 友達
転校生は、鬼が見えない、らしい。
その次の年の夏休み、鬼探しに転校生を連れ回してみて、得た結論が、これだった。
鬼とは三度ほど行き会った。
鼻先を、炎でできた金魚の尾ひれが掠めても、彼は全くの無反応だった。
その目の前で、篠突く雨の中を、粛々と行列は進んでいく。
鬼たちは濡れることがない。
前輪のひしゃげた自転車。太鼓腹した猿顔の小人。膝から角を生やした、油っぽい大蛙。
のんびりした速度の鈴の音。
髪を梳る女の顔は、腹の起伏についている。
そうして最後、極彩色の蝶の群れ。
感嘆の声を上げた私に、彼は胡乱げな目を向けていた。