第2章 夕立
ひらり。
そうこうしている間にも、舞い込む蝶の数が増えていく。
一言ごとに。一息ごとに。
全部が全部、彼の近くに止まる。
「服に花粉でもついてるんじゃないの」
「そうかもしれない」
「心当たりあるんだ……」
意外な肯定に、私は溜息をついて停留所を見回した。
地味で粗末だった場所は、今や至る所がキラキラと光っている。
近くに止まった一匹に、そっと指を差し出してみた。
こちらの考えを知っていたみたいに、蝶は指の上にのぼってくる。
その間も、目まぐるしく蝶の色は変わった。
「見せることができて、よかった」
息を詰めて翅を注視していた私は、その言葉に気付くのが一瞬だけ、遅れた。