第2章 夕立
雨脚はだいぶ弱まってきている。
今は古典の資料でしか見たことのない牛車が、のんびりと停留所を通過していた。
どうやらさっきの牛百足につながれていたようだ。
まあ一応、間違ってはいないよねと笑う。
不意に、視界に何か舞い込んだ。
ふらふらと不安定に飛んで、彼の膝頭に身を落ち着ける。
「……蝶だ」
思わず口をついて出た。
夏場はよく、アゲハ蝶をよく見かける。
そういえば、黒いアゲハを、お祖母ちゃんは「地獄蝶」と呼んでいた。
でも今、目の前にいるのは、そのどちらでもなかった。
指先ほどの、小さい蝶だった。
休めた羽を静かに上下させるたび、目まぐるしく色合いが変化していく。