第2章 夕立
不意に、牛の頭をつけた大百足が、停留所の中を覗き込んだ。
その上で、眼球のついた鏡が飛んだり跳ねたりしている。
私が写っていた。
ひどい顔だった。
行列が観客に反応するなんて、今まであっただろうか。
私の知る限りでは、無い。
見るならば手を出さない。鬼のほうもこちらに反応しない。
昔から、暗黙の了解がそこにはあった。
「……ど、どうも」
反応に困ったので軽く会釈をすると、何事もなかったように通り過ぎていく。
びっくりしたね、と彼のほうを向けば、ひどく表情がこわばっていた。
「大丈夫?」
「……少し、驚いただけだ」
うん、そういうことにしておいてあげよう。