第2章 夕立
去年の冬のことだった。
期末テストの成績が少し下がったとき、彼の母親は怒り狂ったという。
「なんでこんな出来損ないなんだ、ってな、首を絞められた」
そっと首に触れて、彼は力なく笑った。
きっちりと第一ボタンまで留められたシャツと、結び目の崩れていないネクタイ。
思えば昔から、彼は真面目だった。
「そっから、家にはあまり、寄りついてない」
「……正しい反応だと思うよ」
笙の声で鳴く、優美な鳥が行き過ぎる。
「でも、親父を泣かせた」
犬と机の中間にいるような生き物が、羽ばたく本の群れにたかられている。
私は彼に、どんな言葉を返せばいいのだろう。分からない。