• テキストサイズ

おにとゆうだち

第2章 夕立


去年の冬のことだった。
 期末テストの成績が少し下がったとき、彼の母親は怒り狂ったという。

「なんでこんな出来損ないなんだ、ってな、首を絞められた」

 そっと首に触れて、彼は力なく笑った。
 きっちりと第一ボタンまで留められたシャツと、結び目の崩れていないネクタイ。
 思えば昔から、彼は真面目だった。

「そっから、家にはあまり、寄りついてない」
「……正しい反応だと思うよ」

 笙の声で鳴く、優美な鳥が行き過ぎる。

「でも、親父を泣かせた」

 犬と机の中間にいるような生き物が、羽ばたく本の群れにたかられている。
 私は彼に、どんな言葉を返せばいいのだろう。分からない。
/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp