第51章 頑張りすぎる君だから*伊月*
翌朝。
いつもよりも少し遅い朝の時間に、まだ眠りにつく名前に声をかけに行った。
「名前、おはよう。起きれるか?」
そっと頬に口づけると、彼女はゆっくりと目を開けた。
「う……ん。…んー……。…おはよ。」
彼女は目を擦りながらも、まだどこか微睡んでいる。
「朝御飯作ったから一緒に食べよう。」
「えっ!?俊くんがご飯作ってくれたの!?」
俺の突然の一言に、彼女は驚いて飛び起きた。
テーブルに並ぶのはご飯に味噌汁、焼き魚に納豆、玉子焼き。
定番の和食メニューに、彼女はさらに目を丸くした。
「俊くんこんなに料理出来たの?」
「これくらいなら出来るよ。俺だって一人暮らし始めてそこそこ経ってるんだから。…食べよっか。」
一緒にいただきますと言って、彼女は味噌汁を口に運ぶ。
「うわぁ…美味しい。俊くんの料理食べるの初めて!」
昨日の涙はどこへやら、すっかり笑顔になって朝御飯を堪能する彼女。
「これくらいならいくらでも作るよ。なぁ、名前?」
「ん?」
箸を置いて、真っ直ぐ彼女を見つめた。
「一緒に暮らさないか?」
「えっ!?」
またしても突然の一言に、彼女は顔を林檎みたいに真っ赤に染めた。
「俺さ、昨日の名前見て思ったんだ。名前に遠慮せずに甘えてほしいし。どうかな?」
彼女はうん、と頷くと、俺が好きな笑顔で笑いかけてくれた。
「俊くん…ありがとう。…ちなみにそれは前向きな意味だと思っていい?」
「ああ。もちろん。」
その一言で、彼女は満開の笑顔を咲かせた。
頑張りすぎる君だから。
その笑顔を守りたいんだ。