第51章 頑張りすぎる君だから*伊月*
仕事も終わり、会社を出て携帯を見ると名前から一通のメールが入っていた。
「俊くんに、会いたい。」
お互い社会人になり、平日はそれぞれ仕事に追われているので、週末に二人でゆっくり過ごすのが暗黙の了解になっていた。
今日は金曜日とはいえ、平日。
仕事の付き合いもあるだろうからと気を遣って、彼女は平日に「会いたい」なんて言葉は口にしない。
俺は携帯に彼女の電話番号を表示させ、通話ボタンを押した。
呼び出し音が数回鳴ると、彼女の声が少しいつもと違って聞こえてきた。
「…俊くん?」
「名前、メール見たよ。今日家おいで。仕事は終わったか?」
「あとちょっと…。もうすぐ出れると思う。」
「そっか。じゃあ待ってるからな。…あんまり無理するなよ?」
「…ありがと。また連絡するね。」
電話を切り、俺はますます彼女のことが心配になった。
明らかに声の温度が下がっていた。
早く彼女に会いたい。
笑顔が見たい。
俺は様々な思いを巡らせながら、家路へと急いだ。